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ファンタジーな画面に似合わぬ本格法廷教育劇 Eテレ「昔話法廷」って?

2015.08.11 07:30

©iStock/belizar73 「たぬき・むじな事件」をご存知だろうか。 大正時代に実際にあった

©iStock/belizar73

「たぬき・むじな事件」をご存知だろうか。

大正時代に実際にあった話で、ざっくり言うとタヌキとムジナが同じ動物だと知らなかった猟師が、タヌキの禁猟期間に(ムジナのつもりで)タヌキを捕獲したことについて罪に問われた事件である。

これは刑法ではとても有名な判例で、大学で法律を学ぶ人は必ず習う事件だ。しかし、どうだろう。この事件名、何だか昔話みたいな響きではないだろうか。

タヌキどんとムジナどんが、山で仲良くおにぎりを食べていると、そこにすってんころりんとヒグマどんが転げ落ちて来たことじゃった。そんな感じである。

そんな事件を知ってか知らずか、非現実な昔話の世界を法廷で裁いてしまおう、という企画がEテレで、昨日8月10日から3日連続で放送されている。

その名も「昔話法廷」。




■初回は三匹のこぶた

画像はNHK ONLINEのスクリーンショット

「三匹のこぶた」「カチカチ山」「白雪姫」のそれぞれの登場人物が、裁判にかけられる世にも不思議な法廷ドラマ。

初回の「三匹のこぶた」は、こぶた三兄弟の三男「トン三郎」が、狼を殺したのは計画的殺人か、それとも正当防衛か、が争点であった。

オンエア前に番組のウェブサイトや雑誌などで紹介されたドラマシーンは、三匹のこぶた達が法廷でちょこんと並んでいるとてもシュールな姿で、コメディタッチなのかと思いきや、意外や意外、内容は本格派。

「裁判員はキミだ!」のサブタイトルがついているように1人の裁判員の目線でドラマは進み、起訴状朗読、罪状認否、検察側証人尋問(狼の母)、弁護側証人尋問(こぶた長男・次男)、検察官論告、弁護人弁論と、流れは本物の裁判さながら。

「窓や扉をふさいだのに煙突をふさがなかったのは、煙突におびきよせるためでは?」




「狼が1匹入る大鍋を用意してお湯を沸騰させていたのは、最初から狼を殺すためでは?」

と、計画的犯行を主張する検察側に、

「兄が家を吹き飛ばされ、全員殺されるところだった」




「失敗したときのリスクを考えると、身の危険を犯してまで狼を家におびき寄せるでしょうか」

と、正当防衛を主張する弁護側。普通のドラマであれば、最後に判決が出て、めでたしめでたしとなるのだが、そこはEテレ。

最後まで判決は示されず、裁判員のモノローグで「有罪か、無罪か、どっちなんだろう」と疑問を投げかけて番組は終了。




■見られなかった人は再放送で

子供から大人まで誰もが知っている題材をベースにして、裁判を考えさせる、なかなかの本格的法廷劇。

Eテレでは標準的な15分番組という長さもちょうどよく、脚本も昔話の細かいディテールをうまく事件の材料にするなど、なかなか凝っている。

「三匹のこぶた」「カチカチ山」「白雪姫」。いずれの題材も罪は殺人や殺人未遂(殺『人』じゃないものもあるけれども)なのだが、題材が昔話なだけに、話が生々しくならないところも良かった。

この「昔話法廷」。ネットでは至る所で話題になっていたが、朝の10時という意外な時間でのオンエアだったため、見られなかった人が大勢いたようだ。

見逃した方は8月21日と28日、今度は夜の23時台に再放送があるので、是非ご覧いただきたい。

こうなると期待したいのは続編。裁判員制度が前提だと殺人や放火などの重大犯罪ばかりになってしまうかもしれないが、もう少しいろいろなパターンも見てみたい。

かぐや姫の結婚詐欺裁判なんてのはどうだろう。被告人が意見陳述でどんな言い訳をするか、楽しみである。

(文/前川ヤスタカ)

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