実は、株価が上がるのも同じ理由と言うこともできます。国債を持っていても利回りが0.5%しかないなら、値上がりした国債を売って資金を株に移そうとするかもしれません。
ただ、実際にはこういうことは起きていません。なぜなら、普通の銀行は株を買わないし、株に投資する人でもともと日本国債を持っている人は少ないからです。
ですから、量的緩和で景気が良くなるかは、銀行が貸し出しを増やすかにかかっているのですが、現実には、それほど増えていません。増えた分も、日本の企業が海外の企業を買収する資金、あるいは海外に工場を建てる資金を貸し出しているのが大きく、国内の景気と直接は関係ないのです。
ただ、量的緩和で株が上がって景気が良くなる、というイメージが先行して定着し、その影響で期待の自己実現として株価が上がったため、量的緩和で株価が上がる、景気が良くなる、という“理論”が定着してしまったのです。
●小幡績(おばた・せき)1967年生まれ。1992年東京大学経済学部卒、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2003年より慶應義塾大学大学院経営管理研究科准教授。『円高・デフレが日本を救う』など著書多数。
※週刊ポスト2015年8月14日号