「欧州では珍しく、スウェーデンは靴を脱いで家に上がるので、室内を清潔に保ちたいというニーズがあります。また日照時間が短く晴天が少ないため、家の中を明るく快適にしたいという欲求が強い。カラフルなデザインが生まれる背景ではないでしょうか」
北欧独特の風土が生んだ斬新な掃除機に日本の消費者が刺激された。が、それだけには留まらなかった。
「日本のユーザーから実に多くのことを学んでいます。寄せられた声は、新たな機能へ反映させています。例えばヘッドのローラーに髪の毛が巻き付いて困るという課題。黒く長い髪の女性が多い国ならではのお悩みに対して、巻き込んだ毛を短くカットし吸い込むという新機能を開発しました。特許出願中です」
世界で「最もきれい好き」な日本ユーザーから多くのヒントを得ているという。「家電はもっと使う人にとって心地よくできる」。それがエレクトロラックスの根底に流れる問題意識だ。
デジタル家電などの新領域へ次々に事業拡大していく前に、家電メーカーが取り組むべきこと。それは、腰を据えて「白物家電」に向き合うことではないだろうか。掃除機という「古典」的製品の中にもイノベーションの種は見つかるのだから。
プリンシプル原理原則から決してはずれることのないエレクトロラックスの頑固な姿勢。日本の家電メーカーはヒット商品作りの可能性をそこから学ぶ必要があるだろう。
※SAPIO2015年11月号