田舎暮らしを楽しみつつ、「完全移住」のリスクを軽減する。その有効な方法として話題になっているのが、都会と田舎を行ったり来たりする「参勤交代」の考え方だ。解剖学者の養老孟司氏が提唱し、経済アナリストの森永卓郎氏も東京都内と埼玉県所沢市をまたにかけ、プチ参勤交代生活を送っている。
では、この「参勤交代」とは実際にどんな暮らし方なのか。具体的なケースを見てみよう。
A氏(60代男性)は15年前に別荘として熱海にマンションを購入したがほとんど利用せず、「値下がりして売ろうにも売れない」ため、定年を機に、3年前から仕方なく参勤交代を始めた。
平日は熱海のマンションで過ごし、週末だけ東京に戻っている。今ではすっかり2地域生活が気に入ってしまい、人間関係についても「地元の人との交流が意外に楽しい」と満足げだ。
「もっと若い頃だったら、人間関係を煩わしく感じたかもしれませんが、定年後、人間関係が乏しくなると、地元の人たちとの交流がとても大切なものに思えてきます。
こちらに来てからヨガ教室に通うようになり、世代を超えてたくさんの人と知り合いになりました。そこでいろいろな地元情報をもらうほか、食事会にも参加しています。
ここから会社に通勤している人や、かつて金の卵と呼ばれた、集団就職で熱海のホテルに働きにやってきたおばあさまたちなど、いろいろな人がいるから、話を聞いていても興味深いんです」(A氏)