その日も、夕飯を抜いて8時頃、空っ腹にレンドルミンをのんで寝た。翌朝8時過ぎ、ぼんやりと目が覚めた。朝食後に1時間ほど二度寝をして再び目が覚めたときに、異変が起きた。
眠くはないが、体中がどんよりしている。誰にも会いたくない。気がつくとその日、大事な約束をしていた相手からの電話に出て、「行けない」と断っていた。体の歯車がゆっくりとかみ合いだしたのは、午後4時を過ぎてからだ。
あのとき、私の体の中で何が起きていたのだろうか? 久留米大学医学部・神経精神医学講座教授の内村直尚さんに聞いた。
「まず、アルコール摂取後2~3時間内に睡眠薬をのむことは厳禁で、意識が混濁するなど副作用が出ます。また、ダイエット目的で睡眠薬をのむのも、とんでもないことです。睡眠薬の副作用である過食や健忘を引き起こすことがあります。冷蔵庫の中のものを食べ漁ったのにそれを覚えていない、といったことが起こったりします。
それに半錠のんだりするのもよくない。効き目が半分になるどころか、逆に意識障害を起こしたり、うつ状態になることもあります」
副作用、意識障害。強烈な言葉が耳を刺す。しかし、それらは睡眠薬そのものに害があるわけではない。医師の処方に従わず、自分勝手な判断で薬をのんでしまったことにこそ原因がある、と内村さんは言う。
「巷間、“睡眠薬はコワい”というイメージもあるようですが、睡眠薬の副作用で認知症になったり、ボケを引き起こすことはありません。専門医に相談して十数種類ある睡眠薬の中から、不眠の症状に最も適した薬を選んでもらい、用法用量をきちんと守ってのんで、寝る。それに尽きます」(内村さん)
なるほど。素人考えで、近道を探すオバさん根性は戒めなければ。そう強く思った睡眠薬体験だった。
※女性セブン2015年11月5日