突然の身内の不幸に際し、納得のいかない葬儀を強いられる遺族が増えている。広告につられて契約したものの結果的に数倍の支払いが必要になった例などが相次いでいる。NPO法人「葬儀費用研究会」の冨永達也事務局長が語る。
「後悔しないためには生前に数社から見積もりを取っておき、あらかじめ葬儀社を決めておくことがベストです。決められない場合は遺体の安置場所だけでも確保しておきましょう。自宅で安置できるなら搬送費だけを支払い、葬儀については業者選びを仕切り直すことができる。
自宅がダメな場合は民間の遺体安置所や寺院が候補になるため、前もって調べておきましょう。地元の葬儀業者に聞けば教えてくれます。搬送してくれる業者に“搬送だけお願いします”と、葬儀は改めて仕切り直すことをはっきり伝えることで、冷静に費用を検討できます」
公正取引委員会のアンケート(2005年)によれば、前もって葬儀社を決めていた遺族は18.4%。65.1%は葬儀社を決めておらず、情報収集すらしていないのが実情だという。故人が亡くなってから葬儀社を決めた利用者の多くは、他の業者とのサービス内容や料金を比較しておらず、その時間的余裕もなかったとしている。遺族側の準備不足も大きな問題なのだ。
中でも多いのは、亡くなった病院で紹介された葬儀社にそのまま頼むというケース。これは故人の8割が病院で亡くなることと無関係ではない。
冨永氏によれば、病院で紹介される葬儀社は、病院側に紹介料を支払うために料金が高めであることが多いうえ、「急がないと式場や斎場が押さえられない」と強引に囲い込もうとするケースが多いという。
「その場で絶対口約束をしないこと。見積もりをもらい“親族と検討する”と振り切ることです」(冨永氏)
見積もりを取る際には、品質基準を定めた格安セットプランを提案する生協や大手スーパーの『イオン』といった“ブランド展開型業者”の価格を参考にしたうえで、参列者の人数や葬儀形式を決め、より具体的な見積もりで比較するのが良い。そして重要なのは、最もシンプルな「直葬」(通夜や告別式を行なわず火葬のみ)の値段を葬儀業者に聞くことだ。
※週刊ポスト2015年11月20日号