淡谷さんに可愛がっていただいたお陰で、ディック・ミネさん、バーブ佐竹さん、美空ひばりさんといった大先輩たちからも親切にしてもらえた。私が歌手デビューする前から大ファンだった越路吹雪さんも紹介してくださった。その越路さんからはこんな話を聞いたわ。
「楽屋でうどんをすすっても、ステージでは一流ブランドのドレスを着る。芸能人は夢を売る商売。貧乏臭くなっちゃダメなの。淡谷先生からオシャレのあり方、ステージでの振る舞い、芸能界での生き方など、いろんなことを教わったわ」
だから私は今でもその教えに従って、高価な宝石を身に付けて、一流デザイナーのドレスで着飾っているの。
お陰で老後に食べられるだけの蓄えぐらいしかないのに、世間では芸能界で金を貯め込んでいるのは私と森進一だといわれているみたい(笑い)。淡谷さんの教えをしっかり守っている証かもしれないわね。
淡谷さんは美に対する意識もすごかった。「私は美人じゃないから磨かないと大変なことになるの」とせっせと自分磨きをされていたわ。
風邪なのにエステに通って肺炎になりかけたこともあるのよ。米寿を過ぎてもベッドの横には常にハンドクリームやナイトクリームを置いて、いつでもステージに復帰できるように準備されていた。それから見れば私はまだまだ青いわね。
●みかわ・けんいち/長野県生まれ。1965年デビュー。代表曲に『柳ヶ瀬ブルース』『さそり座の女』など。
※週刊ポスト2015年11月27日・12月4日号