現在、日本のラグビー選手のほとんどはチームを所有する企業の社員として通常勤務もこなしている。五郎丸選手もヤマハ発動機の社員として、午前9時から午後3時まで働いた後、練習に汗を流す日々を送っている。つまりサラリーマンとしての生活保障があるわけだ。
しかし、プロ化になれば選手の待遇や練習環境が良くなり、日本代表のレベルアップも期待できる反面、とことん結果や高パフォーマンスが求められることになる。
経済誌『月刊BOSS』編集長の児玉智浩氏も、「選手にとって単純にプロ化だけが最善策とも言えないのではないか」と指摘する。
「本当に力のある選手ならいいですが、ラグビーはケガが多いスポーツですし、30代にもなれば引退の二文字を考える選手もいる。
そう考えたとき、プロ化でクビ切りのリスクを負うよりも、企業に所属して引退後もそのまま働き続ける選択肢を残しておいたほうがいいという選手だっていると思います。社会人スポーツ選手で後に出世した人もたくさんいますしね」
なによりも、プロ野球やJリーグなどの人気スポーツでさえ、採算を取るのに悪戦苦闘するチームも多い中、「まずは2019年までラグビー人気を持続させ、競技人口を増やしていかない限り、プロ化は難しい」(前出・スポーツ紙記者)との声は根強い。
今年6月、日本ラグビー協会では、森喜朗氏の後任として東芝相談役の岡村正氏が新会長に就任した。同氏は日本経団連副会長や日本商工会議所会頭などを務めた“財界の重鎮”であるうえ、自らも東大ラグビー部OBのため、ラグビーへの理解は人一倍深い。
岡村氏は企業依存のラグビー運営スタイルをどう変革していくのか――。その方向性次第で日本ラグビー界の将来が左右されるといっても過言ではないだろう。