母体保護法14条によれば、人工中絶の条件についてこう書かれている。
《妊娠の継続や分娩が身体的または経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの》
染色体異常など「胎児の病気」を理由にした中絶は、法的に認められていない。しかし、現実には陽性反応を受けた9割の女性が中絶を選んでいたことになる。日本で唯一のダウン症専門医療機関『愛児クリニック』の飯沼和三院長が語る。
「胎児の異常を告げられ、精神的な動揺から母体の健康が脅かされている…という拡大解釈が通っているんです。私の所にも出生前診断で陽性と言われた女性が来られます。その場合はダウン症について丁寧に説明して、判断は妊婦にゆだねます。中絶を選ぶかたは経済面や家族の目など、悩みに悩んで決断します。産むことを選ぶかたもまた同様です。100人いたら100通りの選択があっていい。その決断に行政が介入するなんて論外です」
男女平等化が進むとはいえ、いまだ子育ての負担の多くは女性が負う。だからこそ、当事者の女性が想像を絶する苦悩の末に選んだ決断は、第三者によって否定も肯定もされるべきではない。
※女性セブン2015年12月10日号