そして企画力も大いに勉強になりました。我々が読売新聞を退社した直後の1987年5月に朝日新聞阪神支局襲撃事件があったが、「黒さんがデスクならどんな紙面にしますか」と聞いたことがある。すると、黒さんは「読売新聞の紙面で朝日新聞の連載をやるんだよ」といってのけた。

「目から鱗が落ちる」とはこのことだった。朝日新聞も驚くだろうが、読売新聞の読者はもっと驚いたに違いない。普段は酒を飲んで、カラオケと女性が大好きな普通のおっさんだったが、とんでもない発想をする人でしたね。

 野球の監督にたとえれば、選手の使い方がうまかった。軍団には私のような事件記者もいれば、企画力の優れた記者もいる。1番から9番まで絶妙のオーダーを組んでみせていた。黒さん自身は事件記者としてはいい選手だとは思わないが、事件記者を使うコーチ、監督としては抜群の才能を発揮した。部下の良さをうまく引っ張り出す名人、勝負師でしたね。

 組織とはライバルに勝つためにどういう陣を敷けるかが大切なんです。それがリーダーの資質であり、黒さんにあって私になかったもの。これは盗みたくても盗めませんでしたね。

●おおたに・あきひろ(ジャーナリスト)/1945年東京都出身。1968年に読売新聞社に入社。「黒田軍団」の一員として数多くのスクープ記事を取材。現在は独立、コメンテーターなどで活躍。

※週刊ポスト2015年12月11日号

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