「雑草魂」を信条と公言する潰滝の意欲は凄まじい。「駅伝ニュース」を一緒に運営する相棒の「マニアさん」は、今季、潰滝の走りをフィンランド以外はほぼすべて生で観戦している現場至上主義者だが、彼の出走スケジュールは、そのマニアさんをも驚かせる。

 3年前のことだ。夜7時スタートの全日本大学駅伝の予選(東京・国立競技場=当時)を潰滝は走りきる。何とその翌日、朝9時スタートの札幌国際ハーフマラソンにも潰滝の姿があった。飛行機の時間を調べたが、全日本予選を走った後では北海道行きの最終便には間に合わない。レース当日の早朝に札幌に飛び、スタートラインに立ったのだろう。さすがのマニアさんもこの時は言葉を失ったという。

 高校時代から注目されていた同学年の青学大・久保田和真や東洋大・服部勇馬、駒澤大・其田、明大・横手らに比べ、潰滝は3000m障害が主戦場の無名選手だった。しかし、駅伝やハーフマラソンを数多くこなすなかで頭角を現わした。過密日程でも常に1周目から先頭に出て攻めまくるスタイル。エントリーしたらDNS(出走せず)はしないし、故障もない。場数を踏むたびに力強くなっていった。

 今度の箱根ではエース区間の2区ではなく、1区を4年連続で走ることになるだろう。優勝争いに絡むのは難しい中央学院大にとって、“胸にプリントされた大学名を確実にテレビに映す”という思惑もあるのだろう。1区のラスト3km、六郷橋を過ぎて集団走からスプリントが始まる場面で、潰滝がどう動くか。絶対に見逃せない。

【プロフィール】西本武司(にしもとたけし):1971年福岡県生まれ。メタボ対策のランニング中に近所を走る箱根ランナーに衝撃を受け、箱根駅伝にハマってしまう。一年中いろんなレースを観戦するうちに、同じような箱根中毒の人々とウェブメディア「EKIDEN News」を立ち上げる。本業はコンテンツプロデューサー。

※週刊ポスト2015年12月25日号

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