鮪は、魚の中でも特に個体差が激しいとされている。プロは、どうやって身質を見極めているのだろうか。文久元(1861)年に日本橋で創業した歴史を持つ鮪仲卸「樋長」の8代目、飯田統一郎社長が語る。
「形と張り、腹の厚さと脂の乗り具合、尻尾の身を掘って身の塩梅がいいかどうかなどを吟味します。しかし、見て触って判断できるのは7割程度。残りの3割は運と縁です。実際におろすまで本当の身の質はわからないというのが鮪なのです」
そして、飯田社長はこうも語る。
「お客様ごとに異なる鮪の好みを把握し、それぞれの希望にあう鮪と引き合わせるのが僕らの仕事。“仲人”みたいなものですね」
築地市場には「大物」だけでなく、あわびや活魚など高級種物に位置づけられる「特種物」、一夜干しといった「合物」、茹で蛸など様々な専門分野の仲卸業者の店が600軒以上ある。共通するのは、料理人らプロのために高品質の食材を取り揃える確かな目と経験だ。
築地市場は80年の歴史に幕を閉じ、移転先の豊洲で新市場として2016年11月7日に開場する。江戸時代から受け継がれる魚河岸プライドは新天地でも変わらない。
撮影■藤岡雅樹
※週刊ポスト2016年1月1・8日号