国際情報

中国政府が日本アニメを狙い撃ち 「コナン=犯罪の教科書」

中国で放映中の抗日アニメ『渕子崖保衛戦』

 中国政府は今年6月、日本でも人気の高い『進撃の巨人』や『デスノート』などアニメ38作品を「有害指定」した。習近平政権は、なぜ「ジャパニメーション」の規制強化に乗り出したのか。中国出身の漫画家・孫向文氏が解説する。

 * * *
 日本アニメが狙い撃ちにされている理由は、日本の文化を“悪”に仕立て上げることで反日政策の効果を高め、中国共産党の支配体制を安定させたいという党指導部の思惑だ。

 反日政策の中核を成すのが歴史問題であるのは今でも変わらない。その一方で中国共産党は、若者が日常的に接している日本アニメを「ネガティブキャンペーン」の材料として逆利用することを思いついた。日本のアニメが「残虐」「低俗」であるという虚偽のイメージを強調し、人民の頭の中を「日本憎し恐ろし」で埋め尽くそうというのだ。

 今回、有害指定された38作品には含まれなかったが、中国のある教育番組では、幼児から大人まで幅広いファンを持つ『名探偵コナン』でさえ「犯罪の教科書」と批判されたほどである。

 同時に、中国共産党は抗日アニメの制作を積極的に後押しし、幼い子供たちへの影響力を強めようとしている。現在、中国国営放送の中国中央電視台(CCTV)では、残忍な日本兵と八路軍の“偉大なる”戦争をテーマとした『淵子崖保衛戦』や、抗日映画をリメイクした『鶏毛信』が放映され人気を博している。いずれもディズニー作品のようなタッチで描かれており、アニメを通じて幼児たちを反日思想に染めようという魂胆が見て取れるのだ。

【プロフィール】孫向文(そんこうぶん):中華人民共和国浙江省杭州市出身の31歳。漢族。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。現在「デイリーニュースオンライン」と「日刊サイゾー」でコラムを連載中。著書に『中国のヤバい正体』、『中国のもっとヤバい正体』(いずれも大洋図書刊)がある。

※SAPIO2016年1月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
総理といえど有力な対立候補が立てば大きく票を減らしそうな状況(時事通信フォト)
【闇パーティー疑惑に説明ゼロ】岸田文雄・首相、選挙地盤は強固でも“有力対立候補が立てば大きく票を減らしそう”な状況
週刊ポスト
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン