20代を中心とした若い世代で年賀状を送る人は少ない。となれば、逆に送ってきた人は貴重な存在だ。大人力コラムニストの石原壮一郎氏は「初出勤で貰った年賀状にコメントするのが、自分の株を上げるチャンス」と説く。
* * *
お正月の楽しみといえば、何といっても年賀状。しかし、年賀状を出す人が年々減っているのは、いろんな調査でも実感でも明らかです。
日本郵便が8月末に発表した2016(平成28)年用年賀葉書の発行枚数は、すべての種類をあわせて30億2285万枚(速報値)。前年と比べて1割近くの減少です。ちなみにピークは、2004年用の44億5936万枚。10年ちょっとで3分の2になってしまいました。
ある調査では、20代男性の約60%、20代女性の約40%は、2016年の年賀状を出す予定はないと答えたとか。その上、個人情報保護ということで上司や同僚の住所がわからないケースもあり、社内同士での年賀状のやり取りは年々衰退しています。
だからこそ、受け取った一枚一枚の年賀状の重みは増すばかり。とくに20代30代の若い世代は、上司や先輩にわざわざ年賀状を出すことに対して、おそらくこちらが想像する以上に「どうです、ちゃんと年賀状が出せる自分ってエライでしょ!」という得意気な気持ちを抱いています。文面やデザインも、「なぜそれにしたか」という思い入れやこだわりがあるに違いありません。
お正月休みが終わって初めて出社したときには、年賀状をくれた若者を中心に「年賀状の感想」をきっちり伝えたいところ。お返しを葉書で出したから、もう触れなくてもいいという話ではありません。気の利いたコメントで、一気に株を上げ、距離を縮めてしまいましょう。今年一年の会社の居心地は、年賀状へのコメントにかかっています。
自分で描いたイラストや自分で撮った写真を載せていたら、それに触れるのがマナーであり鉄板。「あのイラスト(写真)、いいねー。そういう才能があるとは知らなかったなあ」と言えば、「この人は、自分のことをわかってくれている」と思うでしょう。やたらと長いひとりよがりな文章や、奇をてらったフレーズを書いてきた場合も同様です。
また、裏面が毛筆の手書きの場合はもちろん、宛先を筆ペンで書いてくる相手は、間違いなく字に自信と誇りを持っています。ちゃんと覚えておいて「きれいな字を書くねえ」と感心しないと、「こいつの目は節穴だ」とこちらへの不信感を募らせるでしょう。手書きはいいけど明らかに汚い字のときも、「味のある字だね」と言っておけば大丈夫です。