問題は郊外型で利便性の低いマンションや団地だ。今後、建て替え合意が3分の2に緩和され、強引に計画が進められたとしても、少数の反対派への配慮は不可欠だと山下氏は警鐘を鳴らす。
「高齢者、母子家庭、障碍者など弱者のいる家庭に対して、3分の2以上の賛同を得たからと排除するのではなく、費用負担ほか仮住まい期間の生活まで細かく説明し、一緒に協力してもらうよう丁寧に説得する姿勢が大切です。
それでも反対する住民には、切り捨てるのではなく建て替え後の評価額の見通しを示し、相場価格かそれ以上での買い取りを義務付けるなど、制度面の配慮が不可欠です。
また、民間事業者が積極的に建て替えに取り組めるよう、従来以上の容積率の拡大や補助金、税制面での優遇といったインセンティブが必要になるかもしれません」(山下氏)
今後、経年劣化の進むマンションの建て替え事業は促進されていくのか。それとも再生されずに放置され、次第に空き部屋が増えて“幽霊マンション”と化す物件が増え続けるのか――。供給過剰の日本の不動産市場にとって、避けて通れない一大事だ。