3つ目のボケは、練られた漫才のような言い間違い。カフェへ行って「とても内臓(「内装」の間違い)が素晴らしい」。「何の落ちぶれもなく(「前ぶれもなく」の間違い)」。スマホを片手に「さあ、二度見(「自撮り」の間違い)です」。初恋のエピソードで「彼は坊主大将(「ガキ大将」の間違い)だった」など、そのボケはナイツの漫才に近いものがあります。ボキャブラリーが少ない上に、言葉選びを間違えているからこうなってしまうのだと推察できますが、芸人真っ青のボケであることは間違いありません。
この3つが口からポンポンと飛び出すのですから、滝沢さんを見て「面白い」と感じるのは当然。しかも3つのボケがランダムに飛び出すので予測がつかず、ただただ笑わされてしまうのでしょう。滝沢さんのボケを何かにたとえるなら、野球のナックルボール。投げているピッチャーですら、右へ曲がるか左へ曲がるか下へ落ちるか、あるいはまっすぐのままなのか分からない。滝沢さんもそんな無自覚なまま「結果的に3種類のボケを放っている」ような気がします。
バラエティー番組の大半を芸人が占め“お約束”のような決まった形のボケが多い中、流れを分断するほどのボケは破壊力十分。滝沢さんに向けられる「内容が全然頭に入ってこない」「テレビに出ちゃいけない人なんじゃないの?」などの声は、存在感で芸人に勝っていることの証明です。
今後、「テレビ慣れや話術が向上したときに、現在のキャラがどうなるのか?」という不安はありますが、「芸人同士のようなコンビ芸ではなく、単独でボケられる」使い勝手のよさは、制作側にとって魅力十分。バラエティー番組の強烈なアクセントとして、しばらくは活躍の場が与えられるのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。