出張社食サービスなどを展開してきた株式会社スマイリーも、昨年4月に新しいチルド技術を実現したことで2月2日から「置き弁」サービスを開始した。小さな事業所での利用を想定していたが1000人以上の規模の会社からも導入検討の問い合わせを受けている。予想外の反響の大きさに、広報営業部の加藤貴志さんは、会社側も社員からの目先の人気取りより長期的な健康を重視するようになったとの印象を強くしている。
「食に関わる福利厚生というと、社員食堂にボリューム満点のメニューを追加する、缶コーヒーや缶ジュースの格安自動販売機導入などが多く行われてきました。社員は喜ぶのですが、導入後に社内のBMI値が上昇する傾向が強まり別の悩みを抱えたという例も。長期的に考えると健康に投資したほうが安上がりですから、無添加で500キロカロリー以下に抑え、しかも食べごたえがある弊社の『置き弁』へ関心が集まっているのだと思います」
スマイリーの置き弁当は初期導入費用が30000円(税抜)かかるが、月額利用料はなし。毎週火曜に配送され残ると金曜に回収される一食650円の弁当を、食べたぶんだけ支払う。メニューは和・洋・中3種類が週替わりで飽きない工夫がされている。現在のサービス対象エリアは渋谷区や千代田区など東京12区と横浜市の一部ビルに限定されているが、大阪など都市部を中心に拡大する予定だ。
サービス開始から、この3月で2周年を迎えるのは、チルド惣菜などをオフィスの冷蔵庫に置いておく簡易社食サービス「オフィスおかん」だ。3万円プランからある月額基本料金を会社が支払い、主にひとつ100円でそろえられている惣菜などの代金を食べたぶんだけ支払う。決済用のスマホアプリもあるので、そちらで支払うこともできる。約250社で利用されているが、ほとんどが先方からの問い合わせで導入が決まった。
激務に追われた前職で、オフィスグリコを食事代わりにしたこともあるという株式会社おかんの代表取締役CEOの沢木恵太さんは、自分が欲しかったサービスを始めたら、世の中の人も同じように求めていることがわかったという。
「食事の準備に時間を割くことでストレスが高まるより、上手に外部化しようという世の中の流れと、働きやすい環境を提供して仕事を続けてもらおうという経営側の願いの両方から、福利厚生のひとつとして『オフィスおかん』の利用が進んでいるのだと思います。IT関連などオフィスに滞在する時間が長くなりがちな企業の利用は予想していましたが、結婚式場や病院など、働く人がいるところならばどこでもニーズがあるのには驚きました」
チルド処理して届けられる惣菜類は、人口減で生産量を減らさねばならない悩みを抱えていた地方の総菜メーカーが製造している。ハンバーグやチキンといった定番メニューはもちろん、煮魚など自分で少量つくるのが難しいメニューの人気も高い。現在は東京23区内がサービス対象地域だが、エリア外からの問い合わせも多く「東京都下や全国の都市圏に将来は展開していきたい」(前出・沢木さん)と考えている。
総菜や弁当など中食を利用する食の外部化率は44.0%にのぼる(2013年、公益財団法人食の安全・安心財団調べ)。デパ地下やスーパー、便利な新商品が食の外部化の後押しをしたといわれているが、今や働く人にとって買う場所へ出かける時間のねん出も難しくなっている。オフィスの「置き弁」サービスには、まだまだ伸びしろがありそうだ。