人の気配がなく、カーテンがしっかりと閉められた上村くんの自宅近くに住む、40代女性もこう話す。
「上村くんのお母さんは、事件の前も事件の後も毎日必死に過ごしていらっしゃいましたよ。だから、もうそっとしておいてあげたいんです。きょうだいもいらっしゃるし、本当に頑張っていますよ」
河川敷で献花や供物の管理などをボランティアで行う近隣住民の70代男性の娘もシングルマザーだ。
「娘は仕事と家事と子育てで、ずっと走りっぱなしだから、大変そう。だから土日は自分が子供を預かってる。そうやってみんな頑張っている。
母子家庭だと子育てがきちんとできないとかいうけど、そんなことないよ。子供は頑張っている親のことをしっかりと感じているもの。親が1人だって、子育てする人はしているし、両親が揃っていたって家出したいっていう子もいるしさ、一人親だからっていう問題じゃない」
川崎市内に住む42才の女性は、27才で結婚、29才で男の子を出産したが、夫の借金問題で数年後に離婚した。息子は今中学1年生、上村くんが亡くなったのと同じ年だ。女性は、「シングルマザーの家庭はかわいそう、とか、子供に目が行き届いていないと言われるたびに悔しい思いをしてきた」と話す。
「離婚してからはとりあえず資格をとろうと、毎朝3時に起きて、息子が起きてくるまで勉強していました。
うちは決して会話の少ない家庭じゃないと思います。それでもわからないことはある。でも、それってシングルマザーだからなんでしょうか? 父親と母親の両方がいれば子供の考えていることがすべてわかるのですか? だったら私は子供のために再婚しますよ」
それまでも、息子との関係は良好だったというが、事件後には考えることがあった。
「上村くんのお母さんも、子育てを放棄してたわけじゃないと思うんです。でも、気づけないことってある。うちは、会話をたくさんしてたから、ちゃんとわかってるつもりでいたけどそうじゃなかった。
この間、息子と海に行ったら25m泳げないって言うんです。“ずっとスイミングに通ってるのにどうして? 泳ぐの好きでしょ?”と聞いたら、“泳ぐのもスイミングも好きじゃない”って。私に言われたから通ってたんです。海にも行きたくなかったって。わかってるつもりでいただけなんだって、上村くんの事件が気づかせてくれました」
少年たちも、彼らを取り巻く大人たちも口を揃えて言う。
「いちばん悪いのは、殺したやつらだろ?」
※女性セブン2016年3月3日号