昨年末に公開された映画『大虎』も、抗日映画の大作として話題を呼んだ。舞台は1925年。絶滅寸前の朝鮮大虎を追う日本軍と伝説の猟師を描いた物語だが、作品の根底にあるのは、やはり「朝鮮人を蔑ろにし、傍若無人に振る舞う日本軍」という構図だ。

 作品に登場する日本軍将校は、大虎の毛皮欲しさに山に軍隊を投入。自然と共生してきた地元民の意向を無視し、山をダイナマイトで破壊して虎を捕らえようとする。虎狩りを命じた朝鮮人軍人には「失敗すればお前の地位が危ない。所詮、お前は朝鮮人なんだからな」と暴言を吐き、狩りで命を落とした朝鮮人猟師の遺体を物のように放り投げる。「朝鮮の人々の主体性と尊厳を踏みにじる日本人」が随所に描かれているのだ。

 ちなみに当時の日本軍が地元の猟師と虎の駆除に乗り出したのは事実だが、これは害獣による農作物や家畜、人への被害が深刻化したためで、民間からの要請でもあった。日本軍は朝鮮虎の脅威から民衆を守ったに過ぎない。

【PROFILE】1973年岩手県生まれ。韓国、中国東北部を中心に東アジア地域の取材を行う。2009年より韓国在住。

※SAPIO2016年3月号

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