ここで紹介するのは、「播州刃物 シェフキッチン」(8640円)だ。兵庫県南西部「播州」の刃物産業は、刀の鍛造から始まり、現在まで約250年の歴史があるものの、近年は価格競争の影響で、作っても作っても儲からない状況が続いていた。
このままではいけないと考えた問屋組合が、相談を持ちかけたのが、デザインスタジオ「シーラカンス食堂」代表・小林新也さんだった。伝統文化の魅力を引き出すデザインに定評があったからだ。
そして、小林さんは、産地のブランド化を思い立つ。
「確かな技術はあるから注文は多い。でも、それまでは産地や職人名は出さず、販売店のブランド名を刻印して発売していたので、知名度が低かったんです。そこで、海外にビジュアルでアプローチするため、ブランドのイメージ作りを開始。商品を桐箱に入れ、地元の播州織で包んだ“播州刃物”を国内の5~6倍の価格で売り出したんです」(小林さん・以下同)
すると高級品にもかかわらず、主にヨーロッパ圏で販路開拓に成功。逆輸入の形で国内評価が高まったことで、問屋と職人の自信につながり、新しく後継者も現れた。
播州刃物の中で、特に小林さんが女性に推薦するのが、「シェフキッチン」という、キッチンばさみだ。
一般的なはさみは、園芸用なら枝や茎、理容用なら髪というように切る対象が決まっている。しかしキッチンでは、硬いもの、軟らかいもの、粘っこいものなど、さまざまな食材が切れなければいけない。
「バナナのような軟らかいものをはさみで切るとつぶれてしまいますが、これは、刃の切れ味が悪いのではなく、うまく挟み込めずに食材が滑ってしまうから。そこでヒントになったのが枝を切る剪定ばさみです。
このはさみは、刃が左右非対称で、片側が受け刃になっているから、食材の形を崩さず切ることができる。これなら冷凍肉やかにの足から豆腐まで、力を入れずにスパッと切れるんです」
※女性セブン2016年3月3日号