ダイムラー・クライスラーが支援を打ち切った後は、三菱重工業、東京三菱銀行、三菱商事の「御三家」が金曜会メンバーの企業に支援を要請、御三家の増資を柱とする新再建策を公表し、グループ全体で三菱自動車を支えたのだ。当時、「この不祥事で三菱は終わった」と思った社員は少なくなかったという。
「しかし結果的にはグループの底力、有事における対応力を内外に示すこととなった。社員から“三菱であることを誇りに思った”という声が聞かれたのもこの頃です」(経済誌記者)
雨降って地固まる。トップが示した「仲間は絶対に見捨てない」という精神が、結束力を強くしたことは間違いない。スリーダイヤを守ることが至上命題の三菱。それを物語るエピソードがある。
「三菱グループと全く資本関係のない三菱鉛筆も、三菱の名前があり、スリーダイヤのマークを持っています。御三家の幹部に冗談で『三菱鉛筆が経営危機に陥ったらどうしますか』と聞いたら、真顔で『助ける』というんです。三菱グループが危ないという風評が流れたら困る、グループでなくてもスリーダイヤは守る、というのです」(経済ジャーナリスト)
現実にはそのようなことは起こらないかもしれないが、スリーダイヤの重みとそれを守るためのグループの結束力が窺える話だ。
※週刊ポスト2016年3月4日号