約6年前、30年以上勤めた大手鉄鋼会社をリタイア後、故郷・熊本に夫婦2人で移り住んだB氏だったが、移住後間もなく、妻が階段から落ちて背骨を骨折。「骨粗鬆症」と診断された。
「症状は日に日に悪化し、奥さんはほとんど寝たきりの状態になってしまった。以来5年間、B氏は独りで妻の介護をしてきました。次第に妻は“生きていても仕方がない”“死にたい”といった言葉を漏らすようになり、事件直前には妻が自分の首を絞めながら“殺してほしい”と繰り返すようになったといいます」(裁判を傍聴した地元紙記者)
公判で検察官から「介護で一番辛かったこと」を問われたB氏は、「“死にたい”と言いながら、手で(妻が自分の)首を絞める姿を見るのが耐えられませんでした」と語った。
事件前日も妻は「何もできない。生きる意味がない。楽になりたい。首を絞めて」と懇願。絶望感で精神的に限界に達したB氏は2015年5月3日、妻を車に乗せ、車内で絞殺した。
A氏もB氏も有罪となったが、いずれも執行猶予が付く“温情判決”となったのは、こうした事件が「やむにやまれぬ犯行」と認められた面もあったといえるだろう。
※週刊ポスト2016年3月4日号