また、ミニバンと一口にいっても、「ヴェルファイア」(トヨタ)や「エルグランド」(日産)に代表されるLLクラスの排気量がある大きなクルマから、下は「シエンタ」(トヨタ)、「キューブ」(日産)、「ソリオ」(スズキ)などSクラスのコンパクトミニバンまで幅広い。
前出の井元氏によれば、今後もっともミニバンの存在意義が問われてくると指摘するのが、マツダが撤退する「MPV」や「プレマシー」などMサイズのファミリーミニバンだ。大手メーカーでは「VOXY(ヴォクシー)」(トヨタ)、「ステップワゴン」(ホンダ)。「セレナ」(日産)といった車種が該当する。
「LLクラスのミニバンは、一般家庭が買うには値段が高すぎますし、近所を乗り回すには大きすぎます。威圧感たっぷりのクルマに乗りたい人とか、少しでも大きなクルマで見栄を張りたいという人がコアユーザーになっていると聞きます。
逆に、トヨタの『シエンタ』が売れているのは、ミニバンにしては奇抜なデザインが受けていることもありますが、中途半端に大きなファミリーミニバンを買って空間を持て余すくらいならコンパクトで十分――という層が増えたことの表れでしょう」(井元氏)
日本自動車販売協会連合会が発表している毎月の新車販売台数ランキングをみると、2016年1月は、「シエンタ」が3位と売れ行き好調だが、「ヴォクシー」(7位)、「セレナ」(8位)、「ステップワゴン」(12位)と、Mクラスのミニバンも根強くランクインしている。それでも今後の需要増は見込めないのか。
「子供の多い家族や祖父母を乗せる機会が多いというユーザーにとっては、ファミリーミニバンの需要自体はなくならないとは思いますが、核家族化や少子高齢化がますます進む中、ライバル車種同士の消耗戦は避けられません。いまは価格の安い軽自動車でさえ室内空間が広く、車椅子もラクに入る車種が増えましたからね。
ファミリーミニバンが再び存在感を高めるためには、これまでになかったような斬新なデザインや、走行性能を高めたつくりで運転する楽しみを創出しなければ差別化は図れませんし、市場そのものも縮小してしまうでしょう」(井元氏)
日本人のライフスタイルの変化とも密接に結びつくミニバン市場。果たしてファミリーカーの地位を守ることができるか。