腎臓は血液をろ過して老廃物や水分を尿として体外に出す、体液の量や電解質バランスを調節する、血圧を調節するホルモンを産生するなど様々な働きを担っている。腎臓の機能低下(正常腎機能の60%未満)や腎臓の障害(タンパク尿など)が3か月以上続くのが慢性腎臓病(CKD)だ。CKD患者は国内では1300万人以上、成人の約8人に1人と推計され「新たなる国民病」ともいわれている。
CKDをきたす原因としては、高血圧や糖尿病、メタボリックシンドロームなど若い頃からの悪い生活習慣病が続き、動脈硬化などが進んで発症する患者が多い。筑波大学附属病院腎臓内科の山縣邦弘教授に話を聞いた。
「CKDの初期には、ほとんど自覚症状がありません。健診で尿たんぱくや腎臓のろ過機能(GFR)が健康な人の60%未満の場合、CKDを疑い、かかりつけの医師の受診が欠かせません。3か月以上の間をおいて同じ所見であればCKDと診断されます」
CKDの発症予防、進行抑制には生活習慣病のコントロールが欠かせない。例えば、糖尿病では血液中のブドウ糖濃度が高い状態が続くと毛細血管が弱くなり、血液をろ過する糸球体が破壊され、タンパク尿の出現や糸球体ろ過量が減少し、糖尿病性腎症を発症する。
また、血圧が高い状態が続くと糸球体に負担がかかり、腎機能が低下し、腎硬化症を発症する。腎機能低下になると、さらに血圧が上がるという悪循環に陥る。そして、肥満や脂質異常症、高尿酸血症、喫煙なども動脈硬化の原因となり、糸球体(しきゅうたい)の破壊が促進され、CKDの原因となる。現在、日本における透析治療を要する疾患の第1位が糖尿病性腎症、2位が慢性糸球体腎炎、3位が腎硬化症だ。
このうち、糖尿病性腎症と腎硬化症によるCKDが進行し、人工透析となる人がますます増えている。