このように人と人の関係性を考えて樹形図のように広げていったんです。また、どの登場人物にも自分の思いを乗せています。あささんには働く女性の気持ちを、はつさん(宮崎あおい)は、こう生きられたらいいなという自分の理想を、うめさん(友近)には自分の独身時代の気持ちを。男性キャラにも少しずつ乗せています。
そうした人物設定中に、『この人はいつかこういうセリフを言いそうだな』と考えもします。
〈仕事を優先する母とそれを不安に思う娘。母娘の対立を描く後編のハイライト。119回で千代(小芝風花)があさに「ずっと甘えさしてくれへんかったのはお母ちゃんやんか!」と泣きながら叫ぶセリフは、千代の人物像を固めるときに考えついたという〉
千代ちゃんは、親子だからこそ気持ちをぶつけられるという意味で、あささんのライバルになってほしかった。また、恋愛ではないですが、お互い片思いのような気持ちで、ふたりの関係性がそういうふうに見えていくといいなと、千代ちゃんが生まれたときに思ったんです。
その人物設定のこだわりぶりは、あさや新次郎などの主要人物だけでない。すべての登場人物に共通する。例えば、あさの炭坑事業の前に立ち塞がり、鮮烈な印象を残したサトシ(長塚圭史)。彼にも深いこだわりを持っている。
サトシさんが、正吉さん(近藤正臣)と対面した後に新次郎さんと2人で警察に出頭しに行くというシーンを書いたんですね。
〈新次郎:「(小声でサトシに)わてようそれ言われますけどな、あさよりええ女なんて思いもつきまへんのや」
サトシ:「はぁ、わからへん。破れ鍋に綴蓋というやつか。それよりついてこんかてええ言うてんのに」
新次郎:「ハハハ。よろしがな。三十年ぶりやで。この道でもよう遊んだなぁ」
サトシ:「そやな。竹馬やら貝独楽してなぁ」
などと話しながら去っていくふたり。微笑んで見送っているあさ。〉
そういう会話があれば、サトシさんの希望になるかなと思って書いたんです。オンエアでは残念ながらカットされていましたけど(苦笑)。
※女性セブン2016年4月14日号