子供の連れ去り事件の手口は、年々アップデートされているという──。そして、埼玉県朝霞市の誘拐事件で逮捕された寺内樺風容疑者(23才)が供述し始めた犯行の手口には、驚きを隠せない。
中学生の時から誘拐願望のあった彼は、どうやって子供を連れ去るのかを日々研究。そしていざ実行に移す段階になると、インターネットの地図アプリを使って、誘拐場所を吟味した。「朝霞市は田舎すぎず良い場所だと思った」が、土地勘がなかった。そのため車を使って、何度も現場の下見をしたという。子供の安全対策を調査研究するステップ総合研究所所長の清永奈穂さんはこう話す。
「犯罪者は必ず下見をしますが、子供を連れ去る場所を探すのに地図アプリを使ったのは寺内容疑者が初めてかもしれません。彼は誘拐の手口をかなり研究していました」
愛するわが子を誘拐されないために、まず親ができることは、誘拐犯の「声かけ」の実態を知ることが第一だ。最近は緊急性を訴える手口も多い。実際、寺内容疑者は「お父さんとお母さんが離婚することになった。保護してくれる弁護士のところへ連れていく」と少女に声をかけた。
「一昨年、東京・武蔵野で『お父さんが病気だから病院に連れていってあげる』と誘われた子供が車に乗ったことがあった。この時は幸い、たまたま近くにいた父親が気づいて未遂に終わりました」(清永さん、以下「」内同)
よく「知らない人にはついていかないこと」と子供に注意しがちだが、盲点もある。愛知・名古屋市で、毎日犬の散歩をする小3女児に狙いをつけた男子高校生の事例はこうだった。
「最初は少し離れた場所から『ワンちゃんかわいいね』って声をかけた。翌日、また『かわいいね』って声をかけたら、女児は“昨日のお兄ちゃんだ”と警戒心が薄れた。最終的に高校生は、『もう夕方だから家まで送るよ』と女児のマンションの玄関先までついてきました。それを女児が母親に話したので発覚しましたが、優しく近づく手口には注意したい。
一度でも挨拶すると、子供にとっては“知っている人”になる。『知っている人の車でも絶対に乗らない』『帰り道でひとりになったら、後ろからついてくる人がいないか確認する』など、具体的な事例をあげて念を押すことが大事です」