大石:常識とか倫理とか、そういうものの向こう側にこそ、真実はあると思っているからです。そこを突破しなきゃ手に入れられない恋を描こうと思いました。それが私の隠れテーマ。恋愛だけじゃなくて、どんなドラマでも、既成の価値観、みんながそうだよと言うことが本当にそうなのかという問いかけは、作品の中に込めたいと思っています。
これが正しいと漠然と思っていることの向こう側を、みなさん見ようとしないじゃないですか。見ないで生きた方が楽だから。だけど、そこにある真実に手を伸ばしちゃうこともある。それを、いつもやりたいと思っています。
昨今、不倫が色々と暴かれてますが、いけない事だと思いつつ、やむなく好きになる、その切実な気持ちに嘘はないと思います。別におススメもしませんが。
―今でいうと、ベッキーさんとゲスの極み乙女。の川谷さんですが、参考になる?
大石:参考になりませんよ。よくある話じゃないですか(笑い)。
――大石先生は若手俳優の抜擢に定評がありますが、注目している俳優は?
大石:他の局のプロデューサーにも「いい男の子いない?」って聞かれるのですが、『ふたりっ子』(NHK)の内野聖陽君から『セカンドバージン』の長谷川博己君まで、15年くらいあるわけです。才能のある人は15年に1人居るかいないかなんです。だから価値があるんです。今回は、そういうキャスティングはありません(笑い)。
たとえば、内野君は映画の『(ハル)』を見て、地味な役だったんですが、この人色っぽいなと思ったんです。佐々木蔵之介君は、たまたま大阪にいたので、『オードリー』(NHK)のオーディションを見ることになりました。
何人か部屋に入ってきたときに、佐々木君にしか目がいかなかったの。黙って並んだ時から空間を一人で占領していて、周りに誰がいたのか思い出せないくらい、あの人しか見えなかった。去っていくまで目が離せなくて、「今の子、三重丸!」って(笑い)。うまいとかじゃなくて、魅力のある人は、空間占領度が高いんです。
◇ドラマ10『コントレール~罪と恋~』
NHK総合で、4月15日から毎週金曜午後10時に放送。全8回。夫を無差別殺人事件で失った青木文(石田ゆり子)。絶望の淵で出会った長部瞭司(井浦新)と恋をするが、瞭司は夫を殺した張本人だった。大石静さんのオリジナル脚本。