◆創業家からの「見返り」
経済事件取材に定評のあるジャーナリストの伊藤博敏氏が解説する。
「A氏は被差別部落問題に取り組んだ著名な同和団体元トップ(故人)の異母弟です。A氏は同和運動に携っていませんが、政財界から暴力団関係者など闇社会と接点のあるグレーゾーン人脈まで、幅広く影響力を持つ兄がいることを、自らのビジネス拡大につなげていった。建設会社を土台にしながら、ゴルフ場やホテル経営などレジャー産業を手掛けていきました」
王将創業者の加藤朝雄氏とは約40年前に接点を持ち、出店の許認可を手助けするなどして食い込み、加藤氏の死後も跡を継いだ長男・潔氏(3代目社長)や次男・欣吾氏(元専務)と関係が続いた。伊藤氏はこう説明する。
「親族の裏社会との人脈を利用するA氏は、伸び盛りだった王将という飲食店グループの“トラブル処理係”といえる立場でした。
出店する際に、建築認可を早められるように役所と折衝したりするのはもちろんのこと、店舗で火災事故が発生して上階に暮らしていた建物の所有者が焼死したケースでは、遺族との交渉をまとめるなどしてきた。
そうしたトラブル処理への創業一族からの見返りが、第三者委の指摘する数億~数十億円単位の資金提供だったわけです」