ここまで来ると単なる趣味か、自分にとっての利便性を考えているだけで、宛先の人々の事情は一切考慮されていない。あとは、学校の先生が「部活の顧問になるかどうか選択させよ!」という署名を出したかと思えば、生徒の側に立ち「部活の強制はやめろ!」と主張する署名も立ち上がる。

 一定数のアンチが存在し、さらにはセンセーショナルな話題であれば、メディアが取り上げ、政治家も利用するようなイシューはすぐ作れる。

「東京五輪に向け飲食店の完全禁煙を!」「子どもの教育上、路上でディープキスする人に罰金刑を!」―一部の共感は得られるかもしれない。そんなサイトで5000人が署名しました、さぁ、厚労省、法務省、動きなさい! こんなに多くの人の思いです!

 こんな形で数を元にしたトンチンカン主張がまかり通り、「自分勝手な人々が騒いでるだけだ。公共の利にならない」という反論さえ「民意の無視です!」なんて封殺されるようになったらこの世も末である。

●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など。

※週刊ポスト2016年4月22日号

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