そして、いま吉野家がもっとも注力しているのが、流行りの“ちょい飲み”戦略だ。100円~490円のつまみ類と一緒にアルコールを提供する〈吉呑み〉サービス店舗は、都心の駅前を中心に約350店で展開し、会社帰りのサラリーマンなどを呼び込みつつある。近く、この対象店舗を全店(約1200店)に拡大させる計画だ。
「アルコールを提供する吉呑みの客単価は1500円程度なので、これが全店に導入されて定着すれば、食事だけの客数落ち込みや収益減はすぐに穴埋めできる」(前出の飲食関係者)
だが、商品ラインアップやサービスの多様化により、こんな懸念も指摘されている。
「牛丼以外に鰻重や牛すき鍋、ベジ丼、豚丼、カレーなど、ただでさえメニューが増えて店のオペレーションが大変になっているうえに、酒やつまみも出すとなると現在の人員体制では負担が重すぎて、かえってサービスや質の低下につながりかねません。
また、客単価の高い飲み客ばかりに接客時間の比重を置き、食事客へのサービスが落ちるようなら、来期に描いている業績のV字回復も難しくなるでしょう。本来は主力の牛丼のテコ入れで客数を戻すのが先決だと思いますが……」(前出・中村氏)
これから消費が上向く夏場にかけ、牛丼業界は再び派手な価格競争やキャンペーンで顧客争奪戦を繰り広げるだろう。デフレマインドの転換が図れない中、もっともコストパフォーマンスに優れた商品やサービスを打ち出せるのはどのチェーンか。