国内

「グローバル」の連呼はやはり怪しむべきかという話

こういう感じのキャンパスライフにはほど遠いようで(写真:アフロ)

 文部科学省が進めてきた「スーパーグローバル大学」(SGU)構想が、予定していた支援額が低く、各大学から「詐欺だ」と批判を浴びている。コラムニスト・オバタカズユキ氏が考える。

 * * *
 民主党政権だった頃、内閣府に行政刷新会議が設置され、そこで連日のように「事業仕分け」の様子が報道されていた。行われたのは2009年の11月で結構前のことだから、もう忘却の彼方だという人も多いかもしれない。国家予算の見直しで、事業が必要か否かの判定を「仕分け人」たちが公開の場で下していった試みである。次世代スーパーコンピューター開発の予算削減に際し、蓮舫が「世界一になる理由は何があるんでしょうか? 2位ではダメなんでしょうか?」とバサバサ捌いて話題になったアレである。

 当時の蓮舫のああした振る舞いが良かったかどうか、コトの是非は横におく。その上で実際にはありえない「もしも」の話なのだが、彼女が今も仕分け人であったら、ぜひとも捌いてほしい件があるのだ。スパコンの件は文科省予算の仕分けを担当していたわけだが、こんども相手は一緒。「スーパーグローバル大学」(SGU)構想を推進している文部科学省の担当者を吊し上げてもらいたいのである。

「朝日新聞によりますと、選出された当の大学からSGU詐欺だ、という批判の声があがっているそうです。同構想は失策だったのではないでしょうか。そもそも“スーパーグローバル”という和製英語は英語圏で通じません。直訳するとしたら、“超地球上の”? まるで意味不明です。日本人ですらよく分かっていない造語を内輪でまわしているだけ、つまり、その姿勢からしてグローバル時代から落ちこぼれているのではないですか?」

 私は政治家としての蓮舫の支持者ではないが、言ってくれたらスッキリすると思う。大学改革を主導する中央の人たちがどれほどその道に不案内で、なおかつ、そういう頓珍漢なオカミの顔色ばかりを伺って「現場改革」に勤しんでいる大学がどんだけヒラメ人間の集まりなのか、白日のもとに生中継でさらしたらいいと思うのだ。文科省や大学にも当然、反論があるだろう。だったら、堂々とした公開議論をぜひ拝見したい。

 SGU構想は、一昨年の9月にその選定結果が発表された。〈若い世代の「内向き志向」を克服し、国際的な産業競争力の向上や国と国の絆の強化の基盤として、グローバルな舞台に積極的に挑戦し活躍できる人材の育成を図るため、大学教育のグローバル化のための体制整備を推進する〉という文科省の大義名分のもと、旧帝大や筑波大、東京医科歯科大などの国立大と早慶の計13校を世界の大学ランキングトップ100入りを目指す「トップ型」に選定し、国が各大学に年4.2億円、10年間の財政支援をすることとなった。そこまで認められなかった24校は「グローバル化牽引型」とされ、同じく年間1.7億円の支援が決まった。

 この選定の対象になるべく、多くの大学がグローバル的なカリキュラムを増やし、そのために組織改編もし、あれやこれや学内をいじくった。そのエネルギー総量は相当なもので、通常業務をこなしながら、オカミ向けの提出書類作成に忙殺される教員たちからの悲鳴がよく聞こえたものである。

 鳴り物入りのSGU構想だったから、選定された大学は時代の波に乗った勝ち組としてのイメージを強く打ち出せるだろうと思われた。なので、私はこのNEWSポストセブンで、そこまでエネルギーを投じられない弱い大学と、強引にでもお墨付きをもらえる強い大学との格差が拡大するだけではないか、と批判的に書いた。

 しかし、私は甘かった。選定結果の発表から1年半あまりで、まさかの「SGU詐欺だ」批判がおきていた。報じた朝日新聞によると、実際に2015年度の平均支援額は、「トップ型」で2億8800万円、「グローバル化牽引型」1億3100万円だったのだそうである。フタを開けたら少ないじゃないか、と選定された各大学が愚痴っているそうなのである。

 要は、選定の対象になるために投じたコストのもとがとれそうにない、となったわけだ。なかには留学生の割合の数値目標を達成するために、留学生の授業料を減免していたのだが、その見直しを検討し始めた大学もあるという。SGUに選ばれたことを受験生集めで謳った宣伝費用ということで割り切ればいいのに、そこまで宣伝効果がなかったのだろうか。結局、その損を学生の負担増で埋めようとしている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

結婚生活に終わりを告げた羽生結弦(SNSより)
【全文公開】羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんが地元ローカル番組に生出演 “結婚していた3か間”については口を閉ざすも、再出演は快諾
女性セブン
「二時間だけのバカンス」のMV監督は椎名のパートナー
「ヒカルちゃん、ずりぃよ」宇多田ヒカルと椎名林檎がテレビ初共演 同期デビューでプライベートでも深いつきあいの歌姫2人の交友録
女性セブン
NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
《重い病気を持った子を授かった夫婦の軌跡》医師は「助からないので、治療はしない」と絶望的な言葉、それでも夫婦は諦めなかった
《重い病気を持った子を授かった夫婦の軌跡》医師は「助からないので、治療はしない」と絶望的な言葉、それでも夫婦は諦めなかった
女性セブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン