これでは初乗り料金を低めに抑えても、割安感は薄い。〈混んでいる道路でちょい乗りするぐらいなら歩いたほうがマシ〉との声も出る中、本当にタクシーの利便性は高まるのだろうか。
「かつて1997年から5年間、東京23区内で営業する16社が『初乗り1kmまで340円』の格安料金を引っ提げて走ったが、採算が取れずに元の料金に戻した経緯もある。
今後、埋もれた“ちょい乗りニーズ”がどのくらいあり、値下げによってドライバーの労働条件も守れるのか、きちんと実証していく必要がある。その方向性を見誤れば、業界全体がますます苦戦を強いられる結果になる」(経済誌記者)
これまでタクシー業界は国の規制に振り回されてきた感は否めないが、今度は新たなライバルも無視できない。一般のドライバーが空いた時間を利用して乗客を運ぶ「ライドシェア」と呼ばれるサービスだ。安倍政権もライドシェアの一部解禁を容認している。
価格による顧客の奪い合いが起き、質やサービスの低下が目立ってくれば、それこそ日本のタクシーは世界から汚名のそしりを免れないのではないか。