芸能

『ゆとりですがなにか』 若手俳優の役者力を堪能できる

番組公式HPより

 今やレストランやホテルの予約をする際にサイト上の口コミを判断基準の一つとすることが当たり前なように、ネットで様々なレビューを目にできることで、ドラマの見方、評価も変わってきている。さて、今季の作品群はどうか。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指針を提供する。

 * * *
 春ドラマの見所や味わい所が、浮かび上がってきた。「視聴率」が必ずしもドラマの魅力を反映しているわけではないことはみなさんご承知のはず。数字だけを手がかりに選ぶのはあまりにも残念。なぜなら、今期の春ドラマは目を見張る役者力、息をつかせない脚本力、突出した演出力といった魅力が発見できるから。

 そこで役者力、脚本力、演出力の3つの視点から、オススメのドラマを挙げてみると……。

●役者がブッ飛んでる賞

 この人、何にでもなってしまえるカメレオン。何にでもなりきった上で、しかも、その人にしかない個性がにじみ出てくる。天性の演技力は、訓練や工夫をも超えていく? 『ゆとりですがなにか』(日曜22時30分日本テレビ系)で主役を演じている安藤サクラを眺めていると、そんなことを考えさせられてしまう。

 このドラマ、クドカン「初の社会派ドラマ」。自虐的に“ゆとり”と口にするゆとりのないアラサーの男と女が、仕事に恋に友情に迷う姿がいきいきと描き出される。

 宮下茜を演じる安藤サクラは、高円寺あたりに棲息するアラサーOL。仕事はできるが、私生活はグダグタ。生活臭とリアル感漂う役をやらせたら、この人の右に出る人はいない。

 恋人役の岡田将生が、また光っている。ごく普通の、どこにでもいそうなちょっと優しいサラリーマン。人物像を的確に演じ切っているだけでなく、手先から口元、細かいところまで芝居する丁寧さ。そして思い切りの良さ、大胆さをあわせ持つ。平凡な一サラリーマンがこれほど愛しく見えてくるのは、初めてかも。

 脇を固める役者がまた味わい深い。柳楽優弥が、躍動感に満ちている。水を得た魚のように。松阪桃李、吉田剛太郎がそれぞれ、どこかトンマな愛すべき人物を体現している。ほれぼれしながら役者を眺めてしまう。タイプの違う役者の味わいを堪能できるドラマだ。

●脚本が凝っている賞

 息をつかせぬ展開、ハラハラドキドキ。どんでん返しに、思わぬ伏線。疾走していくストーリーが魅力的なのが『僕のヤバイ妻』(火曜22時フジテレビ系)。

 セットは安作りだし、テーマは「仕組まれた殺人」というベタさ。それなのに展開に呑み込まれて1時間があっという間に過ぎていく。どこかの局みたいに、金さえかければいいというわけでは「ない」ことを、思い知らされる楽しさ。まさに脚本力のたまもの。視聴者を翻弄する心理サスペンスは『ようこそ、わが家へ』等の脚本も担当した黒岩勉の書き下ろし。

 それにしても、これほど怖い木村佳乃って見たことない。やはり、脚本+演出の凄さと言えるだろう。ちょうど同時期に放送中の『真田丸』の中の木村佳乃は、ドタバタ劇にしか見えないから。同じ役者もいかに使うかで、差が出るということのお手本だ。

関連記事

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン