「ソーラー・インパルス2が名古屋に来るらしい、という情報がSNS上にちらほらと出てきていて。どうしても実物が見たいといても立ってもいられなくなって、名古屋まで行ってしまいました」
そう言って笑うのは、女優・タレントのいとうまい子さん。いとうさんと言えば、芸能活動を続けながら2010年から早稲田大学eスクールに入学し、その後も同大学大学院に進み話題になった。専攻はロボット工学。ドラマ『不良少女とよばれて』(TBS系)などで人気を呼んだ1980年代アイドルのイメージとはかなりギャップがあるが、ロボット工学を専攻した理由も「とにかく新しいもの好きだから」と言う。
そのいとうさんが名古屋までわざわざ見に行ったという「ソーラー・インパルス2(以下、SI2)」とは、太陽光エネルギーだけで飛び続ける飛行機のこと。2015年6月、世界一周挑戦中に天候不順で名古屋に緊急着陸し、日本でも飛行機ファンを中心に話題となった。それ以前からSI2に深い関心を持っていたいとうさんは、その情報を得て「この目で実物が見たい」とすぐに名古屋入りしたのだ。
このSI2による世界一周プロジェクトを展開しているのが、スイスの飛行家ベルトラン・ピカール氏だ。今年4月には、ハワイからアメリカ大陸への太平洋横断を成し遂げ、世界的なニュースとなったばかり。彼の著書『空の軌跡』(シドラ房子訳、小学館刊)の日本語版が刊行され、5月24日にスイス大使館にて出版記念パーティーが開催された。
いとうさんは、ラリードライバーの篠塚建次郎さんとともにパーティーに参加し、SI2やピカールへの思いを語った。パリダカでの優勝経験も持つ篠塚さんは、2008年からソーラーカーによるラリーへと挑戦の場を移しており、同じくソーラーで飛ぶSI2に深く共感しているという。
篠塚さんは「ソーラーの難しさは天気に左右されるところ。僕たち自動車は、蓄電が無くなっても停まるだけですけど、ピカールさんの乗っている飛行機は落ちちゃいますからね。それは本当に大変な挑戦だと思いますよ」と語り、いとうさんは名古屋でのスナップ写真を紹介しながら、「SI2を見に来た子どもたちがてるてる坊主を作ってピカールさんたちにプレゼントしたんですよ」と心温まるエピソードを披露した。
『空の軌跡』は、偉大な冒険家を祖父と父に持ち、自身も世界で初めて気球による無着陸世界一周を成し遂げたピカール氏の半生と冒険を綴った自叙伝。「人生でも飛行高度を変えることは可能なのだ」など、空の視点から地球を見つめ続ける著者ならではの人生訓がちりばめられている。
ピカール氏の乗るSI2は、現在アメリカ大陸を横断中。この後、ヨーロッパか北アフリカを経由し、再びアブダビを目指す。