現在、『23』は元朝日新聞特別編集委員の星浩さんがアンカーを務めているが、アンカーが変われば自ずとそのスタンスは変わるわけだ。同じニュース番組でも、作られ方がこれだけ違う。その違いは、扱うニュースの内容によっていっそう際立つ。
たとえば安保法案に関するニュース。昨年頻繁に報じられたが、そこでは番組の特徴がくっきりと表れていた。
NHKのOBと市民らによる「放送を語る会」では、自民党と公明党が法案に合意した2015年5月11日から、国会会期末の9月27日までの4か月半の間、NHKの『ニュース7』『ニュースウオッチ9』と、『NEWS ZERO』、『報ステ』、『23』、『みんなのニュース』(フジテレビ系)をモニター調査した。
この中で、法案に批判的な傾向が見られたのは『報ステ』と『23』だったという。同会運営委員の元NHKディレクター・戸崎賢二さんはこう語る。
「反対だと明言はしませんでしたが、批判的な意見や反対運動を丁寧に伝えていましたし、法案の問題点や欠陥についても厳しく指摘していました。コメンテーターのコメントを通じても、憲法違反の疑いがあるので審議を急ぐべきではないと伝えていました。『報ステ』は憲法学者にアンケートを行い『149人中127人は違憲とし、19人がその疑いを持っている』という結果を大きく報じ、『23』はシリーズ企画『変わりゆく国×安保法制』を40回にわたって放送し、法案の問題点を多角的に伝えようとしていました」
では、他番組はどうだったか。戸崎さんは「NHKの2番組は政府広報的な傾向を強めていた」と指摘する。
「NHKの報道には、政権側の主張や見解をできるだけ効果的に伝え、政権への批判を招くような事実や、批判の言論、市民の反対運動などは極力報じない、という際立った姿勢がありました。法案解説でも問題点には踏み込まず、内容をなぞることに終始しています。『ニュースウオッチ9』では国会審議を報じる際、必ず安倍首相の答弁で終わるように編集され、その結果、政府答弁の印象が強く残りました」
報じた内容については議論されても、報じられない内容については議論もされにくい。ましてやその終わり方となると、よほど注意深く見なければ気づかないはずだ。
※女性セブン2016年6月23日号