中でも最も熾烈な攻防戦は、やはり竹島問題だ。某有名コミュニティサイトには独島掲示板という「戦場」が設けられ、そこで終わらない討論が続いている。日本の読者は驚くかも知れないが、韓国内にも韓国の主張に懐疑を抱き、古地図や古文書、米外交文書などをもって「異説」を訴える人たちがいる。激論を観戦する人々が、彼らが提示する多様なデータを見て衝撃を受けることも少なくない。韓国のマスコミ、教科書では見たこともない資料や話に戸惑いを隠せないのだ。
だが、それはこれまでのところ匿名の空間であるネット上に止まっている。理由は単純だ。実生活の中でそのような議論をしたら韓国社会で最も致命的な「親日派」というレッテルを貼られるか、名誉毀損で訴えられ酷い目にあうからだ。
そうでなくても、彼らのように価値観が変わっていく若者が増えることを恐れているのか、制裁がかけられることもある。異論を訴えるサイトが検索エンジンに表示されなかったり、異論を訴えるブログの記事がブラインドされたりしているのだ。
彼らのような若者はまだ少数であり、社会的な認識を変えられる力もない。それでも少しずつ増えつつあることは間違いない。「蟻の一穴」ということわざがあるが、果たして訴訟で口を封じ込め、一部のサイトを遮断して目隠しすることで、目覚め始めた若者の変化を止められるだろうか。
※SAPIO2016年7月号