オバマ大統領の後、安倍首相も演説をしたが、ほとんど印象に残らなかった。唯一の原爆被爆国として、世界にメッセージを発するいいチャンスだったのにもかかわらず。

 伊勢志摩サミットという大舞台も、「世界経済はリーマン・ショック前に似ている」という無茶な景気認識を述べ、アベノミクス失敗の言い訳をする場になってしまった。そして、近々行なわれる参議院選挙をにらんで消費増税再延期をいうために動いたように見え、日本国民の心も、世界の人々の心も、揺さぶることができなかった。

 だが、世論調査では、安倍政権の支持率はしばらくぶりに大きく跳ね上がった。このまま選挙で大勝し、憲法を変えようという下心が見え見えである。それでよいのだろうか。唯一の被爆国・日本のリーダーとして、世界の中で日本が果たすべき本当の役割とは、「戦争のできるふつうの国」になることではない、とぼくは思う。

 じっくり時間をかけてでも、「核なき世界」をつくるリーダーとして、安倍さんが生まれ変わってくれたら、日本の安倍ではなく、世界のアベになるはずである。

 オバマさんも、大統領任期中の単なるレガシーづくりのために来たのではないはずだ。プラハ演説は空手形だったが、大統領を辞めた後も、本気で「核なき世界」実現のために動き出すのではないかと、期待している。これからである。

 核なき新しい世界の枠組みをつくるのは容易なことではない。たった一度の米国大統領の広島訪問で、何かが大きく前進するとは思わない。しかし、それでも世界の平和のために歩を進めていくことは、原爆を投下した国のリーダーと、投下された国のリーダーの果たすべき責任なのではないか。

 平和記念公園をまっすぐに歩んでいく2人の影が、平和の灯のなかで揺らめく光景に、ぼくは希望を見出したい。

●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。近著に、『「イスラム国」よ』『死を受けとめる練習』。

※週刊ポスト2016年7月8日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
優勝11回を果たした曙太郎さん(時事通信フォト)
故・曙太郎さん 史上初の外国出身横綱が角界を去った真相 「結婚で生じた後援会との亀裂」と「“高砂”襲名案への猛反対」
週刊ポスト
伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
韓国2泊3日プチ整形&エステ旅をレポート
【韓国2泊3日プチ整形&エステ旅】54才主婦が体験「たるみ、しわ、ほうれい線」肌トラブルは解消されたのか
女性セブン