6月28日に開かれるタカタの株主総会では、この期に及んで重久氏の取締役選任案が諮られる予定だ。
当然ながら一部株主や議決権行使助言会社は反対しているが、重久氏は同社の筆頭株主であるうえ、暁子氏が実権を握る高田家の資産管理会社の持ち株と合わせると、創業家がタカタ株の6割超を保有する。そのため、総会での人事議案はそのまま可決されることが確実だ。
また、暁子氏自らも先ごろ、交通事故死傷者ゼロのスローガンを掲げている公益財団法人タカタ財団の理事長職を“続投”する意向を示すなど、高田家の影響力はまったく衰えていない。
だが、前出の福田氏は「いつまでも創業家が支配し続けられる状況ではない」と話す。
「これだけ世界中に被害を拡大させ、なお事故リスクも残っている中、タカタとしては、もはや先代が築いた主力事業などと“浮世離れ”したことは言っていられないはず。まずは説明責任や補償問題で誠意を尽くし、そのうえで創業家の退陣など経営刷新を決断すべきです。
完成車メーカーも、いつまでも被害者を装い、タカタ問題から目を逸らしていては次の展開に進めません。これまでタカタ製のエアバッグに頼りきっていた責任もあるでしょう。今後は業界をあげて再発防止策や安全性の確保を考えなければ、日本車全体のさらなるイメージダウンに繋がりかねません」(福田氏)
タカタ問題は単なる部品メーカーの業界再編で片づけられないほど、大きな“爪痕”を残している。