日本が直面している課題はEU諸国と同じではないが、中国の軍艦が領海や接続水域を何度も侵入して挑発を繰り返してきている今、ヨーロッパの「国民による変革」を見て、憲法を問い直そうとする機運がより高まる可能性は十分にある。
憲法改正は、
・国会議員(衆議院100人以上、参議院50人以上)の賛成により憲法改正案の原案が発議され、
・衆参各議院の憲法審査会を経て、両院の本会議で3分の2以上の賛成で可決し、
・その後60日以後180日以内に「国民投票」が行われて、「賛成が投票総数の2分の1を超えた場合」に国民の承認があったものとみなす
という手続きを踏む。
憲法記念日には例年新聞各社が世論調査を実施し、憲法改正について聞いているが、(設問の仕方によってデータに差が出ることを勘案しても)近年は賛否が拮抗している。新聞社により数%~10数%の差は出ているが、イギリスの国民投票の結果を見ればわかるとおり、結果は蓋を開けてみるまでわからない。いや、今なら「われわれ日本も、イギリスのように変わろう」という勢いのほうが強くなるかもしれない。
ただし、熱狂はときに予期せぬ結果を生むこともある。ジャスミン革命に端を発した「アラブの春」が、それらの国々に混乱を招く結末になったことはその例だ。
グーグルの発表によれば、EU離脱派が勝利を決めた後、イギリスで検索回数が最も多かった関連キーワードは「EU離脱は何を意味する?」で、2番目は「EUって何?」だったという。多くの国民が、離脱して何が起こるか、考えもせずに投票した可能性がある。
EU離脱も憲法改正も、その結果責任を負うのは他ならぬ国民自身だ。“その日”に備え、自分の選択でどう国が変わり、どんな結果をもたらすのか、今から議論を深めておく必要がある。
※SAPIO2016年8月号