ライフ

ウニと牛肉 作り手さえ魅了するうま味で爆発的に流行

最強の組み合わせ

 都内で爆発的に流行っているメニューがある。牛肉とウニのコラボだ。意外な取り合わせがなぜそんなにマッチするのか。食文化に詳しい編集ライターの松浦達也氏が解説する。

 * * *
 いまだ続く肉ブームのなか、「乗せれば(巻けば)いいと思ってるんだろ!」。そうぼやきたくなるような、”ずるい”組み合わせのメニューが東京で大流行している。

 そのメニューは「ウニの牛肉巻き」だ。世に送り出したのは、勝どき橋のたもとにある立ち呑みの名店「かねます」の主人。この品を考案したのは1990年ごろだったという。

「十年くらい前かな、ウニだけ売っていても面白くねえな、と思ってね(中略)。桜肉なども試したけど、やっぱり適度に霜が入った牛のロースがいい。これをやや厚めに切って、適当に身が締まったウニに巻くのが一番旨いんだ。本当にいいものが揃うのは年に数回くらいしかないけどね」(週刊文春2000年6月1日号)

 もともとこのメニューは「肉ありき」ではなく、「ウニありき」だった。むっちりした食感の牛肉を噛みしめると、肉の間から濃厚で甘いウニがあふれ、口内がうま味でいっぱいになる。ウニは具でありながらソースでもある。前出の「ウニだけ売っていても面白くねえ」というコメントを引き合いに出すまでもなく、どこに出しても主役を張れるウニをソースとしても扱うのだから贅沢極まりない。

 つい数年前まで、この品は「かねます」の専売特許のような位置づけのメニューで、他の店で見かけることはあまりなかった。ところが最近の肉ブームで他店との差別化を目指してか、この「牛肉×ウニ」を取り入れる店が、東京で増えている。焼肉店では薄切りにしたロースを炙り、ウニを乗せて巻いていく。寿司屋では肉で巻いた軍艦巻きがバーナー炙られる。ほかにもあちらこちらで「牛肉×ウニ」という組み合わせを見かけるようになった。

 なぜこれほど誰もが彼もが「肉×ウニ」に惹かれるのか――。

 実はウニのうま味成分は、非常に豊富かつ複雑なのだ。昆布だしや玉ねぎのうま味として知られるグルタミン酸、かつお節のうま味成分のイノシン酸、さらにはきのこのうま味成分でもあるグアニル酸まで含まれている。他にも、成分自体にうま味のあるアラニンはグルタミン酸との掛け合わせでうま味を増強する。メチオニンはうま味の決め手にもなりうる苦味成分をつかさどり、バリンは甘味と苦味で味わいに深みをもたらす。

 うま味、甘味、苦味、まろやかさなどを演出する成分てんこ盛り。ウニはもはや天然のうま味調味料! そう言ってもいいほど、その身には豊富で複雑なうま味が含まれている。

 そんなうま味爆弾を、牛肉に合わせるのだから、誰もがとりこになって然るべし。そのうま味、食べ手はもちろん、作り手さえも魅了する。そういえば近年ではウニを使ったパスタなど素材としてのウニを活用するメニューもずいぶんと増えた。成分が似ていて相性がいいとされる卵と組み合わせた料理も多い。

 知るほどに、ウニのうま味は深くなる。そのうま味、もはや禁断と言ってもいいほどである。

トピックス

12月9日に亡くなった小倉智昭さん
小倉智昭さん、新たながんが見つかる度に口にしていた“初期対応”への後悔 「どうして膀胱を全部取るという選択をしなかったのか…」
女性セブン
六代目山口組の司忍組長。今年刊行された「山口組新報」では82歳の誕生日を祝う記事が掲載されていた
《山口組の「事始め式」》定番のカラオケで歌う曲は…平成最大の“ラブソング”を熱唱、昭和歌謡ばかりじゃないヤクザの「気になるセットリスト」
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSのカバー画像
「どうして卒業できないんだろう…」田村瑠奈被告(30)の母親が話した“大きな後悔” 娘の不登校に焦り吐露した瞬間【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
激痩せが心配されている高橋真麻(ブログより)
《元フジアナ・高橋真麻》「骨と皮だけ…」相次ぐ“激やせ報道”に所属事務所社長が回答「スーパー元気です」
NEWSポストセブン
無罪判決に涙を流した須藤早貴被告
《紀州のドン・ファン元妻に涙の無罪判決》「真摯に裁判を受けている感じがした」“米津玄師似”の男性裁判員が語った須藤早貴被告の印象 過去公判では被告を「質問攻め」
NEWSポストセブン
Instagramにはツーショットが投稿されていた
《女優・中山美穂さんが芸人の浜田雅功にアドバイス求めた理由》ドラマ『もしも願いが叶うなら』プロデューサーが見た「台本3ページ長セリフ」の緊迫
NEWSポストセブン
トンボをはじめとした生物分野への興味関心が強いそうだ(2023年9月、東京・港区。撮影/JMPA)
《倍率3倍を勝ち抜いた》悠仁さま「合格」の背景に“筑波チーム” 推薦書類を作成した校長も筑波大出身、筑附高に大学教員が続々
NEWSポストセブン
12月6日に急逝した中山美穂さん
《追悼》中山美穂さん、芸能界きっての酒豪だった 妹・中山忍と通っていた焼肉店店主は「健康に気を使われていて、野菜もまんべんなく召し上がっていた」
女性セブン
結婚披露宴での板野友美とヤクルト高橋奎二選手
板野友美&ヤクルト高橋奎二夫妻の結婚披露宴 村上宗隆選手や松本まりかなど豪華メンバーが大勢出席するも、AKB48“神7”は前田敦子のみ出席で再集結ならず
女性セブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
【入浴中の不慮の事故、沈黙守るワイルド恋人】中山美穂さん、最後の交際相手は「9歳年下」「大好きな音楽活動でわかりあえる」一緒に立つはずだったビルボード
NEWSポストセブン
NBAロサンゼルス・レイカーズの試合を観戦した大谷翔平と真美子さん(NBA Japan公式Xより)
《大谷翔平がバスケ観戦デート》「話しやすい人だ…」真美子さん兄からも好印象 “LINEグループ”を活用して深まる交流
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
「服装がオードリー・ヘプバーンのパクリだ」尹錫悦大統領の美人妻・金建希氏の存在が政権のアキレス腱に 「韓国を整形の国だと広報するのか」との批判も
NEWSポストセブン