「日米同盟は日本外交の基軸であり、世界の平和と繁栄のため緊密に協力していく」
安倍首相は、そう繰り返してきた。しかし、その「基軸」の片方であるアメリカに、変化が見え始めている。共和党大統領候補であるドナルド・トランプ氏が日米同盟に批判的な主張をぶつけたことが話題になったが、産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久氏は「アメリカでは、長く日米同盟懐疑論が語られてきた」と指摘する。
古森氏は、米国内での日米同盟批判論は珍しくも新しくもなく、大別して最も過激な「破棄論」、「不平等・不公正論」、「縮小論・弱体化論」の3種類があるという。ここでは「縮小論・弱体化論」について紹介する。
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日米同盟の縮小論あるいは弱体化論はアメリカ側の事情だけで在日米軍が減り、日本への防衛誓約が弱くなる傾向だと言える。
オバマ政権は財政赤字への対処として2011年に予算管理法を成立させ、赤字が一定以上に増せば、国防費をその後10年間に最大7500億ドル削減するという方針を打ち出した。米軍部隊も大幅に縮小する方針だ。在日米軍を支える基盤が小さくなっているのだ。
そのうえアメリカ政府は在日米軍の再編について2006年に日本側と合意した「ロードマップ」で沖縄駐在海兵隊の9000人を日本国外に移転させることなどを決めている。縮小への動きである。
さらにオバマ政権は有事の日本防衛の責務を確実に果たすことにも疑いを感じさせる。尖閣諸島の防衛でも「尖閣は日米安保条約の適用対象になる」とは述べるが、決して「尖閣有事には米軍が守る」とは言明しない。なにしろエジプト、イスラエル、サウジアラビアなど年来の同盟や緊密なきずなを保ってきた諸国の政権に冷たくし、不信を高めた軌跡があるのだ。
これはアメリカ自身の利害からの同盟縮小論ということだろう。
※SAPIO2016年8月号