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2016.07.23 16:00  NEWSポストセブン

近畿大学が世に放つ「ウナギ味のナマズ」はキワモノではない

近畿大学世界経済研究所の有路昌彦教授


 ではその頃、ナマズは?

 歌川広重の『東海道張交圖會』には、ウナギとともにナマズも名物とされていた、という記述がある。「不二沼のウナギのかば焼きの味は日本一と評判が高く、ナマズ丼は鰻丼より4割安かった」(「世界のナマズ食文化とその歴史」日本食生活学会誌第25巻第3号)

 つまり、ウナギの蒲焼きと並び称され、しかも価格は手ごろだった。

 さらに江戸後半の安政の頃には一転、ナマズがウナギを凌駕する瞬間がやってきた。ナマズの値段の方がなんと「6倍も高価であった」(同)というのだから驚きだ。

 1855年、安政地震が発生すると、「地震を起こす」と信じられていたナマズが注目を浴び、大ナマズを描いた錦絵が人気を呼んで、ナマズブームが巻き起こった。地震の復興によって仕事が増えた大工や左官たちが、ナマズを買い求めて特需が起こって価格が高騰した、と推測される。

 いずれにせよ、さまざまな形でナマズは庶民の生活に寄り添い、身近なところに居続けていたのだ。

「今の70代以上の人に聞くと、近くの川でナマズをとって煮たり焼いたりして食べたよ、という声が結構あるんです。そもそも日本の食文化の中に、ナマズがきちんと存在していた証ですよね。しかし、1950年代くらいから全国で開発が進み自然環境が悪化していくにつれて、『ナマズは臭い』と言われるようになってしまった。でもそれはナマズのせいではなくて、環境破壊の結果による変化なわけで、人間のせいなんです」(有路教授)

 そもそもナマズの味は、水質とエサによって大きく左右される。自然環境が破壊され水質が低下することで、ナマズはまずくなり、私たちとの距離も遠くなっていった。

 もう一度、水とエサとをコントロールすることで、ウナギに迫る美味しいナマズができるはず──そう考えついた有路教授は、現代の平賀源内かもしれない。

 あらためて脚光を浴びつつある「近大発ナマズ」。それはキワモノでもゲテモノでもなく、言ってみれば「失われた日本の食文化の再生」だ。

「今はまだ少ししか供給できていないけれど、そのうちにワンコインでナマズ丼が食べられるように、生産量を拡大していきたい」と有路教授は言う。

 大手スーパー以外にも、 7月30日の「土用の丑の日」には東京・銀座と大阪の養殖魚専門店「近畿大学水産研究所」で、ランチ「近大発ナマズ重」(2200円)、ディナー「近大発ナマズ蒲焼」(2000円)が限定販売される。

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