日本の市区町村の数は全部で1873(政令指定都市の行政区を含む)。北海道から沖縄まで、まさに千差万別だ。そのうち、最も余裕がない(お金がない)村を、ノンフィクションライターの前川仁之氏が訪ねた。
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財政面で余裕のない村とはどのようなところなのか。財政力指数(1.0であれば収支バランスが取れていることを示し、1.0を上回ると、国から自治体に与えられる「地方交付税交付金」の原則支給対象外となる)が11年連続で0.05と全国最下位の村、鹿児島県三島村へ飛んだ。
竹島、硫黄島、それに黒島。島が3つで三島村、という分かり易い名前を持つこの自治体は、人口400人に満たない小さな村だ。九州本島との交通は、村と鹿児島港とを2日で1往復する村営フェリー「みしま」と、あとはセスナ機が週に2回運航しているのみ。
鹿児島空港からセスナ機で硫黄島に向かった。乗客は私一人で、機長のガイドを聞きながら梅雨の晴れ間の空をゆくのは最高にいい気分だ。
出発から1時間弱、セスナはわずか800mしかない硫黄島の滑走路に危なげない着陸を決めた。草に囲まれた飛行場の待機所から、作業着姿の男性が出てきて、重たそうに張ったスーパー袋を機長に差し出す。
「ほら、ダイミョウダケ。持っていきな」
「うわ、うれし~!」
大名竹、と島で呼ばれる琉球竹は村の名物で、ちょうど旬を迎えていたのだ。そしてこの待機所番の男性は、木屑のついた作業着からは想像もつかないが、村の看護師なのだった。ここは無医村で、月に2回、日赤の医師が島を訪れる他は、診療所で対応する。急患の時はヘリを呼ぶしかない。夜間は自衛隊ヘリだ。