スポーツ

五輪開始直前 女子アスリートの持つエロティシズムとは何か

シリア(難民五輪選手団)のユスラ・マルディニ AP/AFLO

 開幕が迫ったリオデジャネイロオリンピックのメダルには、古代ギリシャの勝利の女神が描かれているという。ジャズミュージシャンの菊地成孔氏が女子アスリートのエロティシズムについて解説する。

 * * *
「一見簡単そうだが、実はものすごく難しいテーマ」というものがある。「信用できるダイエット理論はあるのか?」「心の病は、トラウマと脳とどちらが原因か?」「フェチやポルノの動画は、性犯罪を抑止するか、助長するか?」等々、そのほとんどが精神/身体、健康/病理という二項対立を扱っているが、その極点の一つに「(ここでは敢えて限定的に)女子アスリートの持つエロティシズム。とは何か?」があると思う。

 昭和には「健康的なヌード」というクリシェがあり、言葉とは裏腹に、淫靡な意味合い、つまり、あらゆる裸体が性的な欲情の目線で見られているとすると色々とよろしくないので、「これは健康的なのである。溌剌としていて、生まれたままの姿は純粋で、淫靡さが全くない」という合理化を行ったわけだが、この件を掘り下げ、「二次大戦前のドイツには〈裸体運動〉という、自然崇拝に基づいた一種のヌーディズムがあり、一時かなりの高まりを見せたが、ナチスはこれを〈退廃芸術〉としてヒステリックに弾圧して」等と始めると、第一には無駄に長い話になるし、第二には、『ESPNマガジン』誌が恒例としている「アスリートのヌード写真特集号」が、フェミニストから目立った抗議も受けていないことや、我が国の「かわいいヌード」「クールなヌード」感覚、古くはピーチジョンによる文革とも言える「女子目線のセクシー」等の定着により、余りに話が古く、カビが生えているかのように感じる。

 しかし実際、「この問題」は、欧州の裸体運動の昔から、どころか、アダムとイヴの楽園追放以降、一歩も進歩していないと私は思う。

「問題は〈欲情させるか、感動させるか〉だ」という人々がいる。なるほどこれは一見物分かりが良さそうに思える。体操選手の余りに見事な演技を見て、レオタード姿がいかに扇情的であろうと、開脚や屈曲を含む、あらゆるアクロバティックな四肢のポーズが、どれほどフェティッシュであろうと、そもそもが異形のレヴェルにまで鍛錬された肉体それ自体がすでにフェティッシュであろうと、ギリギリで感動が勝る。

関連キーワード

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン