炒める沖縄、煮込む長崎、汁物の徳島と、各地域でそうめんはさまざまな形で親しまれてきた。その他の地域でも滋賀の”鯖街道”朽木谷の「焼きさばそうめん」は春祭りのごちそうだった。広島の「やはんぎそうめん」は阿多田島で「やはんぎ」と言われるスズメダイで出汁をとったお盆の品で、鮎がよく獲れた和歌山の紀の川では、素焼きの鮎で出汁を取った「あゆのだしのそうめん」もあったという。
ほかにも、ここには書ききれないほど、そうめんを使った料理が全国にあった。そうめんは手軽に調理ができ、味のクセも少ない。その使い勝手のよさが、山海の食材を含めた、多様な食文化と結びつきやすかったのだろう。
今年5月には、播州素麺で知られる兵庫県たつの市で「全国そうめんサミット」も開催された。次回は三輪素麺のお膝元である奈良県桜井市で開催されるという。目新しい品も悪くはないが、昔からその地域に根づいていたそうめん文化に触れられるような試みに期待したい。