厚生労働省は、一般歯科の院内感染対策ガイドライン(平成26年度)で、使用したハンドピースは患者ごとに交換し、「オートクレーブ滅菌」することを強く勧めている。
オートクレーブ滅菌とは、121度以上の高圧水蒸気ですべての微生物を殺滅または除去することを指す。ハンドピース内部には、高速回転するタービンが組み込まれているが、回転を停止した際に血液や唾液が吸い込まれる現象が起きる。
最新型のハンドピースには逆流防止の装置が付いているが、完全にブロックできないため、高圧水蒸気が内部まで届くオートクレーブが推奨されているのだ。当然のことながら、表面をアルコールで拭く消毒だけでは、肝炎ウイルスなどを完全に除去できない。
しかし、現役の歯科衛生士(50代)は、赤裸々に実態をこう語った。
「ハンドピースは、午前と午後の診療後、各一回だけ交換します。患者ごとにアルコール綿で拭きますが、歯科医は感染予防なんて全く気にしていません」
──感染予防について聞く患者は?
「誰もいません。不思議と。ただ、私の家族は他の歯科医院で(病気を)うつされたら困るので、自分の勤務先に来させます。正直いうと、その時は滅菌したハンドピースに変えますね……」
●取材・文/岩澤倫彦(ジャーナリスト)と本誌取材班
※週刊ポスト2016年8月12日号