ライフ

無縁墓を防ぐには「墓じまい」という方法が有効

膨大な情報を整理することが必要

 8月に入り、お盆シーズンが間近だ。お盆休みを利用し、地方にある実家に帰省して、お墓参りするという人も多いだろう。ところが、中高年を中心に頭を悩ませているのが、その「お墓」の問題だ。都心の一極集中化に加えて、少子高齢化により、墓守をする人が少なくなり、先祖代々のお墓が無縁化の大ピンチを迎えているのだ。お墓を巡る問題は、これに限らず多岐にわたる。それらを解決するヒントとなるのが、葬儀・お墓コンサルティングの第一人者である吉川美津子氏がこのほど上梓した『お墓の大問題』(小学館新書)だ。吉川氏にお墓に話を聞いた。

 * * *
──最近、夫と同じ墓に入りたくないという妻が増えているそうですが。

「縁もゆかりもない土地にある夫の先祖たちと同じ墓に入りたくない。夫の家族と折り合いが悪いなど様々な理由があります。実際に拒否することはできます。“死後離婚”という言葉があります。

 これは法的に死後離婚できるわけではないが、配偶者の親族と縁を切りたいために『姻族関係終了届』を出す人が増えています。これは、離婚と同様に配偶者の血縁者と親戚関係を修了するというもの。配偶者の父母や兄弟姉妹等の扶養義務も例外を除いてなくなります。ただ、厄介なのは墓の名義人が仮に妻だった場合です。その場合、夫の遺骨だけでなく、先祖代々の遺骨も妻が所有することになり、管理する義務も生じてしまうのです」

──子どもがお墓の承継を拒否するケースもあると聞きます。

「墓の承継は財産の承継とは異なり、墓守という負担を背負うことになります。子どもが都心に家庭を持っている場合、田舎のお墓の管理をするというのは手間もお金もかかります。

 離婚・再婚等で家族関係が複雑なケースもあり、それで承継を拒否する人も増えているのですが、悲観する必要はありません。神仏や祖先の祀りを祭祀といいます。祭祀に関連する家系図や仏壇や墓地などを祭祀財産といい、これらの相続については、金品の相続とは切り離されて考えられているからです。

 祭祀財産の承継者については、民法に以下のような条文があります。1,被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。つまり、遺言で子どもを祭祀承継者と指定すれば、本人がどう思おうが指定されてしまうのです。また拒否権もありません。ところが、そこまでして子どもに負担をかけたくないという親御さんが増えているから悩みが尽きないのです」

──ある調査によると無縁墓になると考えている家庭は5割を超しています。

「無縁墓の問題は今に始まったことではありません。しかし、それが顕著になった背景には、日本の核家族化があります。団塊の世代など現在60代後半から中盤にかけての世代は、兄弟姉妹が多く、墓守の問題が顕在化することは少なかった。ところが1960年代からの人口の都市集中化により、親世代は生まれ育った場所で死を迎える人が少なくなりました。子世代は年に数回、故郷に行く程度でしょう。菩提寺があった土地への帰属意識も薄れていくのも当然です。地域を離れ、家を手放し、墓を手放すという流れは、ごく自然な流れなのです。加えて、少子化も無縁墓増加に拍車をかけています」

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン