──これ、このままいくんですか?
「いえ、付属のハサミでお腹を切り裂いて、中身を掻き出して卵焼きに載せてください。タガメと仲良くなろう!」
仲良くって、食べるわけだし。ハサミでの処理を宮下さんにお願いすると、なんとなく手つきがおぼつかない。
──あれ? ひょっとして苦手ですか?
「いやあの、もの凄く積極的に食べたいかと聞かれると、そうでもない的な」
──自分も虫が怖いんじゃないですか!
「いえあの、この私と虫との微妙な距離感が、一般のお客様の昆虫食への目線を忘れないためにも必要ではないかと、自分では思っています」
なんだかんだ言いながら、タガメから掻き出した中身を卵焼きに載せる。空っぽになったタガメが目に入らないように、卵焼きを口に含んでみると……なんか!ものすごく良い匂いがする!
「でしょう!タガメの内臓は洋梨のラ・フランスみたいな香りがするんですよ!」
すごい。あんな恐ろしい形相の昆虫から、こんな香りのものが出てくるなんて、生命の神秘に触れた気がする。乾燥したコオロギも小魚みたいでビールのおつまみにいけそうな感じだ。素揚げしたカマキリの子もうまい。
「見た目と味のギャップというのが、昆虫食の醍醐味なんですよ」
昆虫食に若干距離を取りつつも、宮下さんが将来考えている食材がある。
「海外に食用のゴキブリがいるそうなんですよ。5センチくらいで動きも遅いそうです。何年先になるかわかりませんが、トライしてみたいですね」
その際にはまたレポートすることを読者のみなさまにお約束する。「米とサーカス」の昆虫食フェアは8月いっぱいまで。