午前0時半、比例区で社民党に1議席が入り、福島瑞穂候補の当確が出る。野党共闘候補の当選が決まると大きな拍手が出るのに、社民党の場合にはない。野党共闘でも微妙な温度差と不協和音。
支援者が、凝視するように目を血走らせて40インチの液晶テレビを見つめ続けた午前0時40分、NHKで小川候補の当確報道。決して広くない選対本部にすし詰めになった100人近くの支援者は、瞬間総立ちになった。飛び上がるもの、抱き合うもの、泣き出し嗚咽を漏らすもの。終始劣勢での戦いを強いられた小川陣営の喜びひとしおである。
緑色のポロシャツを着た若い女学生は、小川選対に協力した「SEALDs」所属の女子ボランティアの人々である。当確の瞬間、彼女たちはわっー、といって泣き出した。小川万歳、当選万歳の歓呼三声が深夜の歌舞伎町に高らかにこだました。
私は民進党や小川候補のオピニオンに対し、賛同できない部分のほうがむしろ多い。しかし、当選の瞬間、すべての労苦が報われたその刹那に、100人の人々が狭い事務所で絶叫したその歓喜の咆哮に、私は思わず胸が詰まる思いがした。日付が変わって7月11日、民進党最後の反転攻勢が結実したその瞬間であった。この熱狂を、私は生涯忘れないだろう。
一方、「東京選挙区第6位」で当選ラインにいると豪語し、「選挙フェス」で若者から支持を得たと自称し、山本太郎議員の熱心な応援を受けた三宅洋平選対を覗いたが、ふたを開ければ当落線上にも届かず、まさにお通夜状態であった。
当選祈願の短冊に「成し得たり大調和の国際政治」と三宅直筆の願掛けがあった。正直、意味が分からなかった。三宅選対ビルの前には、なんの趣向か人力車が公道に配置され、そこで開票速報が中継され、路上にヒッピー風の三宅支持者たち数十人がたむろしていた。
全ての開票が終わった午前1時、三宅選対の前の人力車は、ひっそりと近場のコインパーキングの軽トラックの荷台の上に格納されていた。落選した選対の前から人はすっかり消えていた。
「我や先、人や先、今日とも知らず、明日とも知らず」。熱狂の陰には、必ず絶望がある。
●ふるや・つねひら/1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。主な著書に『愛国ってなんだ 民族・郷土・戦争』『左翼も右翼もウソばかり』。近著に『ヒトラーはなぜ猫が嫌いだったのか』。
※SAPIO2016年9月号