その緊急事態条項創設にも公明党内には慎重論があるうえ、自民党のホープ・小泉進次郎氏は「憲法改正の前に目の前の生活がある」と震災被災地の復興を優先させるべきだと訴えているから、百家争鳴状態。
さらにそうした改憲派の足並みの乱れを見越したように護憲勢力も動き出した。改憲に反対する「九条の会」事務局長の小森陽一・東大教授は、「今回の選挙結果は重く受けとめ、日本の進路と憲法にとって重大な局面であると認識しています」とした上で「9条があったから日本は戦争に巻き込まれず、ギリギリで安全が守られてきた」と語る。
一方、日本会議・神奈川副運営委員長の木上和高氏は、「9条があるから平和になったわけではない。日米安保と自衛隊が抑止力になって平和が守られたのは明らか。現実と乖離した憲法の改正を阻むことこそ立憲主義に反すると考えます」と主張する。
憲法改正をめぐって国論を二分どころか三分四分する論戦がスタートする。
●レポート/武冨薫(ジャーナリスト)
※SAPIO2016年9月号